ビジネスツールとしてのWeChat
~マーケティングや業務ツールとしてのWeChat~
『ビジネス指さし会話帳 中国語』著者の亀田純香です。
前回は、WeChatの基本機能についてご紹介しましたが、今回は、ビジネスツールとしての側面を紹介していきます。
①マーケティング手法として存在感を増すWeChat
WeChatでは、FacebookやLINEなどと同じように、自社の公式アカウントを取得することができ、この公式アカウントは通常のチャット同様に投稿したり、フォロワーとのメッセージのやりとりができます。
ターゲットの地域や性別、年齢、興味や関心、消費力、そして消費傾向などを分析しながら、新着情報の配信、キャンペーンの告知等、ポイントを踏まえたアピールができるため、公式アカウントを持ち、フォロワー数を増やすことは重要です。
よく見かけるのは、公式アカウントのQRコードを店舗に設置して、フォローすれば、その場で使えるクーポンや割引になるサービスなどを提供する方法です。
フォロワー数が多いアカウントは影響力を持っていますから、ページ内やモーメンツに広告を配信するなど媒体の露出スタイルも変わってきました。
現地の日系企業も、特に飲食、百貨店、旅行業関係で、情報配信をしているところが多いようです。ただ、中国の現地企業のスピードには、やや置いていかれている印象は否めません。
②WeChat内の店舗も多数~EC機能~
WeChat内には7千万を超えると言われるショップがあります。これらは微店(Wei Dian/ウェイディエン)と呼ばれ、個人がサイドビジネスとして出店している場合もあれば、企業が運営しているものもあります。
微店は、WeChatが運営するショッピングサイトで、出店料は無料です。コストもあまりかからないうえに、WeChat内で運営できるという便利さもあって、サイドビジネスとして利用している個人も多いです。
個人のビジネスで代表的なのは、日本を中心とする海外商品の代理販売や情報配信などを取り扱う「代購(ダイゴウ)」です。微店がプラットフォームとなり、日本と中国の間での越境ECを可能にしています。それぞれの個人店主が切り盛りする「ミニネットショップ」という感じです。
一方、企業の多くも、フォロワーとコミュニケーションを取りつつ、WeChatのアカウントの中で、商品などの販売も行っています。マーケティング、広告、コミュニケーション、予約、注文から支払い決済までをアカウント内で完結することが可能なので、運営上も非常に便利です。
アカウント内の情報を見て、「いいな」「ほしい」と思ったときにすぐに注文、決済ができるので、ユーザーにとっても使いやすく、企業側からすると、ユーザーの購買意欲がピークに達した機を逃さず、購入へと繋げる利点もあります。
③日々の業務ツールとしてのWeChat
次に、より身近なビジネスで見るWeChatの活用ですが、例えば、会社内での業務のやりとり、取引先との連絡などのツールとして、頻繁に使われています。
日本でも、ビジネスでのやり取りにLINEが使われることもあるようですが、中国では、便利なものを活用しない手はない!とばかりに、会社内でも、社を超えたプロジェクトでも、グループチャットをつくり、連絡や指示などのやりとりをしているのがふつうです。
欠勤、遅刻などの連絡がWeChatで来るのはもちろんのこと、報告書などの文書や添付ファイルもメールではなく、WeChatで送受信することが当たり前のようになっています。
また、名刺交換がされていたビジネスの場で、今、主流となっているのは、WeChatの交換です。
私自身も、日系企業や日本人同士の初対面の挨拶で使うくらいで、名刺を出す機会が激減しました。
ここには、会社主体で必ず名刺を交換する日本の慣習と、人間関係、特に個人のつながりに重きを置く中国の考え方との、もともとの違いも影響していると思います。結局のところ、名刺を交換するよりも、WeChatのほうが連絡もとりやすく、相手の趣味や関心ごとなども分かりやすいので、話題作りにも便利です。名刺よりも強くつながりやすいのが、WeChatなのかもしれません。
ちなみに、友人や知人の紹介でもWeChat内の名刺カード機能を使えば、とても手軽かつ便利にできます。
もちろん、デメリットもあります。一度しか会ったことがない人、ビジネスでただ紹介されただけの人ともWeChatでつながってしまうので、連絡先が増える一方となり、管理をするのが大変です。短い時間でも放置しておくと、「この人、誰だったかな?」と考えることがよくあります。
膨大な情報量となるWeChatデータをどう管理していくかが、名刺整理にかわる、日常作業になりました。中国人の友人は「紙を使わないから、エコじゃない?」と笑って言います。
企業の名前で仕事をするか、個人ブランドで仕事をするか、中国人のビジネス概念にもマッチするこのWeChatの活用法が日本人と中国人で対応が異なるのも頷けますね。
ただ、一つ確実に言えることは、中国とビジネスで関わる場合には、WeChat抜きでは難しいということです。
ここまでWeChatの影響力をご紹介してきましたが、もちろん、実態は厳しい実態もあります。
例えば、企業アカウントなどは増える一方なので、ユーザーの中でもフォローはしているけれど、企業からの情報はほとんど見ずに、友人・知人とのコミュニケーション、決済、特定サービスのみ利用しているという人も多いからです。
企業がアカウントを作って情報配信するだけで売れる、人気が出るということにはなりません。企業アカウントにいかにアクセスしてもらうか、配信情報をどう閲覧してもらうかといった工夫が必要になっています。
次回は、このWeChatで、今話題の「ミニプログラム」について、ご紹介します。
(つづく)