中国版LINE、WeChatがいろいろとスゴい
『ビジネス指さし会話帳 中国語』著者の亀田純香です。
●日本でも見かける存在になった「微信」
先日、東京に住む友人が2枚の写真を送ってきてくれました。
二つの写真に写っている「微信支付」という文字ですが、「微信=WeChat」「支付=支払い」、つまり「 WeChat支払い/WeChat pay ウィーチャットペイ」のことです。
中国からの旅行者のほぼ100%はWeChatユーザーといえ、当然、その中の機能の一つであるWeChatペイも使っていますから、日本でもその決済に対応しようとするお店が増えているようです。
WeChatは、中国を中心とした中華圏で使われているSNSアプリで、あまりにも存在が巨大になっているため、一言ではとても説明できません。上海に住んでいる私も、使わない日はありません。
その、大きな存在感を持つWeChatについて、ご紹介していきたいと思います。
●LINEの使えない中国
中国で、ネット上の規制があるのはご存知の通り。Google、LINE、Facebook、インスタグラムなどが使えません。
その中で、SNSアプリとして、圧倒的なシェアを持つのがWeChatです。中国語では「微信(Wei Xin/ウェイ シン)といいます。日本では、中国語版LINEと紹介されることも多いですが、WeChatは既に、「それがないと、生活もビジネスも成り立たない! 」ほどの存在感となっているので、LINEと比較するのは適切でないようにも思います。中国人の多くは、激しいWeChat依存です。
通信手段としてのWeChatの機能は、LINEとあまり変わりません。
音声や動画による通話やチャット、ボイスメッセージが簡単にできます。最初は、コミュニケーションツールとして若者の間で大人気となり、またたくまに普及していきました。LINE同様、不特定多数に対して発信するのではなく、友人申請を承認し、登録した人に対して発信します。
「モーメンツ(朋友圏)」とよばれる機能では、コメントやメッセージ、写真や動画などを他のユーザーとシェアすることができ、生活や自撮り、家族の写真をシェアすることでより他ユーザーとの距離感が縮まるようです。
私は、日本にいる家族や友人とは、よくWeChatの基本機能である無料通話を利用しています。互いにWiFi環境下であれば、国際通話でも無料。このあたりもLINEと同様です。
ただ、日本ではまだまだWeChatのユーザーは少ないので、まずは「Wechatって何?」から説明しなくてはいけません。
ユーザー数で言えば、WeChatはLINEの数倍の規模にあります。LINEのユーザー数は、世界で約2億人(うち、日本が7500万人)ですが、WeChatは2018年には、そのユーザー数(月間アクティブユーザー数)が10億人を越えたと言われています。どれだけ活用されているのかが分かります。
今、中国人や、中国の企業などと何かしら関わりがあるとき、とくに中国を訪れるときは、このWeChatが使えないと不便です。
●WeChatのスマホ決済機能、WeChat pay
WeChatの機能の中で、中国人で急速に浸透したのが、スマホ決済(モバイル決済)機能「微信支付/WeChat pay ウィーチャットペイ」です。
上海で生活をしていると、現金を見ることが少なくなったことへの実感があります。このキャッシュレス化を支えているのが、WeChat payやAlipay(支付宝/アリペイ)で、これさえあれば、現金をもたなくても十分生きていけますし、生活に欠かせないものになっています。
現金のやりとりをしないことで、レジスタッフの負担も減り、効率もあがり、トラブルも回避できます。スマホ決済を利用できるところは急速に増え、逆に使えないところがないのではないかと思うほどです。露店にもしっかりスマホ決済用のQRコードがあり、病院の支払いもこれで済みます。
上海では、若者が財布をもたなくなってきたと言われるようになり、居住する外国人の間でも「パスポートの次に大事なのはスマホ」と言われています。スマホさえあれば、買い物に困ることもありませんが、充電が切れるとそのダメージが強烈です。
●ごく普通に使われている送金機能
WeChat payには送金の機能もあり、これもごく一般的に使われています。
中国らしいのが「紅包(ラッキーマネー/ホンバオ)」機能です。
「紅包」は日本語のご祝儀、金一封などにあたるものといえます。春節(旧正月)のお年玉や結婚やちょっとしたプレゼント、報酬の一部として相手に渡すもので、普通は赤い袋に現金をいれて渡します。
この習慣が現在では、現金をやりとりするよりも、WeChat の「紅包」機能を利用するほうが一般的になりつつあります。それほど、よく使われています。
WeChatの「紅包」機能で便利なのは、中国でおめでたい数字と言われる「8」をつかった「8.88元」のような細かい金額まで設定できること。そして、相手に、瞬時に送れるのも便利です。グループで食事をした際の割り勘のときにも端数まできちんと渡せます。また、お正月に田舎に帰省できなくても、この機能で、しっかり「お年玉」を渡すことができるというわけです。
この夏は上海でも猛暑が続いていますが、例えば「暑中お見舞い」がわりに「紅包」が届き、「どうぞ冷たい飲み物でも飲んで!」なんてお洒落なコメントを発信してくる中国人の友人もいます。
ちなみに「紅包」として送れる金額は200元(約3,500円)までです。200元以上は「送金」機能を使うことになります。この「送金」機能もとても便利で、受取確認をすると、ほぼ時差なく、入金されています。
●WeChat payの欠点
居住している人にとって、とても便利なのですが、ご年配者や外国人旅行者にとっては不便なサービスになっているのが現在の課題のようです。
なぜかというと、WeChat payは銀行口座へのヒモづけが必要になります。中国での銀行口座と中国での携帯番号が必須で、現在はいずれも取得するのに外国人にはハードルが高いことがネックです。
また、ご年配者にとっては、急速に発展していくスマホ決済という概念についていけない、使えない人も多く、まだまだ現金払いが主流ですが、WeChat payやAlipayの普及で、現金NGのお店も増えてきました。これが不便と思う人も多いのです。
※文中でも出てきましたが、WeChat payと同様のネット決済サービス、Alipayも非常に多く使われています。こちらも銀行口座へのヒモづけが必要です。
次回は、送金機能の詳細と、ビジネスでも使われているWeChat機能を紹介します。